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対談食品施設計画研究所 高橋 賢祐×(株)クォードコーポレーション三上様

食品工場の排水処理について

食品工場排水処理の対談

2023,2,20

 

排水処理は必要不可欠でも仕組みは

食品工場の排水処理メーカー株式会社クォードコーポレーション部長三上様に本日はお話しをお聴きします。
宜しくお願い致します。
食品工場の計画を依頼された際、必ず計画地の使用水と排水を確認します。特に排水は、放流先の水質基準により処理施設の規模が決まり、土地利用に影響する為、最初の段階で検討の必要があり、重要な施設と考えています。
まずは御社の業務内容からお話しをお願いします。

 

親会社の製品が規格化によるコストダウンに繋がる

三上:
弊社の創業は1975年に生活排水の処理企業としてスタートいたしました。
創業当初、コンクリート二次製品を扱っている会社を親会社としてスタートしたことから今日までボックスカルバートによる排水処理槽を採用しております。
現在、建設作業は人手不足の状況が続いております。自社においても設計作業や製造作業に当たる従業員の不足や高齢化を感じております。
その解決策として製品の標準化、規格化に取り組む事を今日まで続けています。その効果としてコストダウンにも繋がっていると考えています。
言い換えると「設計をしない設計、工事をしない工事」を基本方針としています。

具体的には処理槽を6種類のコンクリート製のボックスの組み合わせとし、水槽内に設ける設備器機も事前にできる限り工場で組み立てるなど、現場での作業を可能な限り減らす仕組みを構築しています。
それらの努力の結果、短納期、コストダウンを実現させています。

高橋:
単純に比較は出来ないと思いますが、他社と比べてどの程度のコスト差がありますか?

三上:
全体で30%程度差が出ると考えています。

高橋:
コンクリート既製品のボックスを利用するメリットは分かりましたが、通常の鉄筋を組、型枠にコンクリートを流して作る一体型の処理槽と比べて接続部分の問題はありませんか。

三上:
ボックス同士を接合する接着材は専門メーカーに開発してもらい、合わせて施工方法も充分検討しています。
実際、東日本大震災を経験した弊社の処理施設には接合部分のずれなどに一切損傷はありませんでした。
一方、規格化、標準化の効果が生かせる規模としては50㌧から300㌧の範囲と考えております。
300㌧以上の場合は、一般的なコンクリートの打設による処理槽となり、規格品と同じ用に弊社の業務として行っています。実際数多く受注もしております。

 

地域や排水の水質と処理方式の選択

高橋:
処理槽にボックスカルバートを使用する点などの特徴はよく分かりましたが、処理方法自体に特徴は有りますか。

三上:
水質汚濁防止法及び各市町村により排水の水質基準が厳しい場所や放流先の河川や下水道などで条件が異なります。
霞ヶ浦や瀬戸内など基準が厳しい地域に対しては0.4μの膜を通す、膜分離活性汚泥方式を採用しています。
下水道への放流の場合は、ランニングコストの低減を考え、微生物をスポンジに付着させることで大量の微生物による処理が可能となる担体曝気方式により汚泥を産廃として出さない方法を用いています。

高橋:
膜処理の場合、良く膜の交換などに費用が掛かると言う認識がありますが如何ですか

三上:
現在、弊社は平膜と中空糸膜の二種類のメーカーを採用しております。
膜自体は、処理水の激しい動きによる損傷が考えられますがどちらの膜も東日本大震災でもの損傷はありませんでした。
各社共、耐久性の向上に取り組まれ、年々その成果は上がっています。

高橋:
担体曝気方式で下水道放流の場合、汚泥の処理が不要となると説明されましたが、原水の水質で違いはありますか。

 

新種の微生物の発見が新たな展開に

三上:
原水の濃度が濃い場合、一般的に前処理として加圧分離装置を設ける必要がありそこでの汚泥の発生はあります。

高橋:
加圧浮上の場合、使用する薬剤に費用が掛かると聞いていますが。

三上:
確かにその通りです。弊社はその点に注目し、微生物だけで処理が出来ないか、大学と共同研究を行い油脂の分解性が高い新種細菌、E2株を発見し微生物製剤としての商品化に成功しました。
この菌を利用する事で処理能力も上がるため、処理量の増加などの条件の変更に対して、今までの廃水処理施設の増設での対応が必ずしも必要では無くなります。
現在、特許を大学と共同で出願しています。

 

 

メンテナンスはモニタリングによる状態の把握で

高橋:
新種微生物による処理など、様々な取り組みを行っているとのお話しですが、メンテナンスに特徴は有りますか?

三上:
ITを活用し、現場に行かなくても状態の監視が出来る遠方監視によるメンテナンス契約も行っています。
携帯のLTEという電波で制御盤を結び365日、状態を監視させていただき、点検回数を減らすことでメンテナンス費用を下げる取り組みもおこなっています。

高橋:
どのようなポイントを監視していますか。

三上:
工場側からはリアルタイムで製品の変更や生産量の増加などの情報をいただく事は出来ない場合が多く、状態が悪くなってからの原因の究明と対処となり、場合によっては行政の検査で指摘されることにもなる場合、生産に影響する事になります。
それを未然に防ぐ為に流入量の増減や、計装器のモニタリングポイントの値等、相関値での水質の異常等を監視します。最終的には処理水のSS計やCOD・窒素・リン計、透視時計などのモニタリングで確認します。
異常値が確認出来た場合は直ちに工場側に報告できる仕組みを構築しています。又、最低月1回は現場での採水分析を致します。


高橋:
メンテナンス契約はマストですか。

三上:
マストでは無く選択となります。お客先でメンテナンスをする場合もありますが、専門知識が必要な事から、ほとんどのケースで契約を結んでおり、遠隔地の場合は遠方監視のメンテ契約をお願いしています。

高橋:
処理水に関してギャランティーをするのであればメンテ契約は絶対条件とした方が良いのではと思いますけれど。

三上:
先ほど話しましたように遠隔地は監視装置でのメンテナンスを是非お願いしたいと思います。

 

今までで一番困った状況は

三上:
野菜処理工場で殺菌に使用する次亜塩素を濃度や使用量を確認しないまま使用し、排水したことにより、菌が死滅し、全く処理機能を失う事態になった事例がありました。

高橋:
自分も同じ経験があります。水槽などの洗浄に使用する酸の排水時の希釈を間違え、結果は、お話しと同じような状況を後から聞いたことがあります。
このような場合回復手段と回復に要する時間はどのくらい掛かりますか。

三上:
他の廃水処理施設から微生物を含んだ処理水をタンクローリーで運んで加えます。
回復に要する時間はおよそ1,2週間程度かかると思います。

 

排水処理メーカーの選択のポイントは

高橋:
IFFが設計を行う工場の場合、建設工事会社の選定と同様、排水処理メーカーも常に競争入札で選定しています。その場合、購入仕様の作成を施主会社の社員によるかIFFの業務で行うことになります。それほどの知識が無い場合、どのようなポイントが重要でしょうか。

三上:
当然コストの比較は必要ですが、最近では大手食品企業の問い合わせにおいて、賠償保険でカバーできる金額を尋ねられることがおおくなりました。依頼企業としては、廃水処理の不具合で製造が停止する場合の損害対策が重要な事も当然と理解します。それに答えるため弊社は1億から3億以上に増額しました。

高橋:
仕様は標準化されていると思いますが、出来ればここは変更したいと思うポイントはありますか。

三上:
消費電力の低減に貢献出来るポイントは効率の良いブロワーの採用が良いと思います。
今後は耐用年数に関しても検討を続けていきたいと思います。

 

サブスクの利用で

高橋:
排水処理メーカーとして、新たな取り組みはありますか。

三上:
包括サービス契約を導入しました。最近よく聞くサブスクリプションです。
初期費用と不規則に発生する修繕費の平準化による定額契約を利用出来るようにしています。
新規だけでは無く、既設の改修にも利用が出来ます。
の他、処理槽のコンクリート躯体の老朽化の診断も行っています。

 

高橋:
排水処理施設の仕組みや、メーカーの取り組みなど、なかなか知る機会が無いのは事実です。この対談が直接話を聞かれる動機に繋がれば良いと考えています。
三上さん本日はありがとうございました。

株式会社クォードコーポレーション ホームページ

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