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対談生産上のミスの防止やトレーサビリティーに役立つ

食品工場のITソリューション

2023,8,21

工場のIT化と聞くだけで、高い、判らない、でも必要な時代かも

今回は、食品工場におけるITとは、その必要性などを訊かせていただくため、
毎回FOOMAに協力していただいておりますニッコクソフト営業部の矢形様にお話しをお聞きしたいと思います。
高橋:
それでは簡単に会社の概要の説明を宜しくお願いします。
矢形:
株式会社ニッコクソフトの矢形と申します。
弊社の親会、ニツコクトラストは産業給食を行っている関係から
IT企業ですが食品工場様向けのソリューションを提供しております。
製品としてのパッケージはMES(製造実行システム)を持っています。
そちらも食品工場様向けに特化したものです。
納品先としては、大手香辛料会社、ハム会社や製菓会社等の実績がございます。
どの会社も大手様なのでパッケージのカスタマイズを基本としたパッケージの販売となります。

食品製造に必要なシステムとは

高橋:
私も長く食品工場の設計、エンジニアリングに係わっていますが、多くの食品会社の方々は大手食品会社と異なり
ITの導入の意味やメリットなどを正しく理解しているとは思えません。
そこであえて疑問に答えてもらう形で話を進めていきたいと思います。
MES=製造実行システムと聞いて、ピント来る人と来ない人がいると思います。
本来、食品製造であろうが、機械等の製造であろうが最低限必要な
ITのソリューションとは何か、その必要性などからお話しをお願いします。
矢形:
そうですね食品製造工場が多くで使用しているシステムは、製品を作るために必要な材料の管理、レシピの管理を行う生産管理システムです。
製造側は生産管理からの製造指示書により、今日は何を何個作るかの指示のもと
原材料を集め、次工程毎の作業指示に従うことになります。
製造実行システムの場合は、紙ベースでもらっていた生産管理の情報を各工程に対して
モニターやタブレットで見られるようにします。
高橋:
それならば紙ベースでも問題は無いのでは?
矢形:
そうかもしれませんが、ある意味で、安心安全の構築やトレースがしやすくなります。
高橋:
説明を聞いてますます判りにくくなりましたが、
生産管理システムと製造実行システムは違うシステムですか?
又異なる場合でも両方のシステムが必要となりますか。
矢形:
そういうわけではありません。
高橋:
といいますと生産管理システムだけで成り立ちますか、その上に上位のシステムが必
要となりますか?
矢形:
食品工場であれば生産管理システムだけで問題はありません。
高橋:
受注によりアイテム毎の生産数量が確定した後、製品に対して必要な原材料がどれだけ必要か等、
レシピを分解し、指示することは生産管理システムでできるのですか?
矢形:
出来ます。
生産管理システムには所容量展開と言って一つの製品を作るために必要な材料及びそ
れぞれの数量などを部品展開する機能があります。
高橋:
部品展開に必要な情報は生産側でインプットするのですか?
矢形:
そうです
高橋:
製品やレシピが変わる毎にインプットする事になりますね。
矢形:
フォーマットを提供しそこに入力してもらう形となります。
高橋:
他に何か利用出来ることはありますか?
矢形:
在庫管理ができます。
高橋:
簡単に言うと入荷した分から使用した分を引いた残りですね。
そうなると、入荷時の情報の入力が必要になりますね。
矢形:
現場からは、製造結果のフィードバックを行います。製造予定数と実際の製造数の差
異はその原因を含め現場からの口答により報告されることが多いと思います。
高橋:
中小の現場の多くは、紙ベースで行っているようですか?
矢形:
最近は、エクセルを使用して自分達で生産管理に必要なフォームを作成し、
使用している事が多いと思います。

食品工場の生産管理システムと製造管理システムの違いは

高橋:
生産管理システムは判りましたが、製造実行システムとの違いがよく分かりません。
お話しの中では生産管理システムからの紙ベースのアウトプットを
タブレット等に直接送るだけの違いに思いますが……
矢形:
確かに、現場の情報を紙に書いて生産管理に入力することが端末機で入力するだけで入力出来るという点だけを見るとそうかもしれません。
製品を自動でカウントする、又は各計量情報を自動的に取り込む計測機などと連動することで的確な情報が生産管理システムにフィードバック出来ることになります。
高橋:
頭に生産管理システムがあってインターフェイスで繋がった製造実行システムと理解すれば良いのですか?
矢形:
そういうことになります。
生産管理システムが持っている情報を利用することになりますが、弊社の製造実行システムは、生産管理システムの所容量展開の機能をも持っている製造実行システムになります。
高橋:
生産管理システムを既に持っている会社は、製造実行システムを入れる必要はありますか?
矢形:
正直、ニツコクとしては必要と言いたいところですが、既に運用が出来ている会社にとって高額なシステムを導入する判断はトップマネージメントの判断になると思います。

食品工場製造実行システム(MES)の流れ

食品工場の製造実行システム基本構成

システムをこれから導入する場合、コストは

高橋:
新たに製造実行システムを導入する場合、既に運用している生産管理システムとの関連性はどのようになりますか?
矢形:
あくまで上位の生産管理システムからデーターをもらって、それに対して製造の実績を返してあげるシステムなので生産管理システムはインターフェイスを介して使用します。
高橋:
生産管理システムを持っていない会社は、両方のシステムを導入すべきですか?
矢形:
同時に両方のシステムを導入するのは高額な投資となります。
ニツコクは生産管理システムの商品は持っていません。
現在エクセルベースで生産管理を行っている会社ならば、エクセルのデーターを取り込んで
製造実行システムだけを運用しているお客様もいらっしゃいます。
高橋:
製造実行システムを導入したい場合、どのような相談をしたらよいのですか?
矢形:
現場の状況とか正確なトレースをしたい、原材料の使用量を正確に取りたいと相談して
いただければ製造実行システムを紹介することになります。
高橋:
工場の規模によると思いますが、最低いくら位、掛かるものですか?
矢形:
直近で導入されたお客様の場合、3,000万円程度の費用となっています。
高橋:
その場合の製造実行システムはニツコクさんの商品ですか?
矢形:
製造実行システムは昔からMESと呼ばれ、多くの会社から販売されていますが、弊社のシステムは、自社の商品です。
高橋:
商品化されているシステムにもかかわらず多くの費用が必要な理由をお話し頂ければと思います。
矢形:
弊社のシステムをそのまま使用してもらえる場合は少なく、導入前の内合わせにおいて、
うちは、こういう情報が欲しい等、製造現場の要望に合わせる作業の発生が高額になる要素と考えています。
弊社のソフトそのまま使用するならば、要望に合わせた場合に比べて半額程度になると思います。
但し、今までの実積を考えますとそのままのケースは無いと思います。

食品工場におけるIT業界の仕組み

高橋:
実際に食品施設が係わった建設計画で、システムの導入を御社が担当していたと記憶していますが
全てのシステムが御社の商品ですか
矢形:
多分、某社の件と思いますが、生産管理システムはN社で、製造実行システムはF社だと思います。
高橋:
ニツコクさんが全てのシステムを構築したのでなければニツコクさんは何を請け負っていましたか?
矢形:
弊社は、全体の取りまとめと客先の要件の整理を行い、それぞれのシステムを担当会社に伝え、
それぞれのシステムに必要な情報の書き換えが要件にそって行われることを客先に替わって検証する業務を受注いたしました。
高橋:
システム導入のコンサルタント業務みたいな感じですか。
そのような取り組みは業界では普通なことですか?
矢形:
大手ITベンダーと呼ばれている会社は、客先の要件によって生産管理システム、
製造実行システムを自社のソフトを含め、何処の会社に担当させるかを選定する業務が
中心となります。
高橋:
整理すると工場側が求めている要件をはっきりした形にした要件定義を作成し、
数社に依頼し選定する、全体を統括する業務を行うのが大手ITベンダーと理解すればいいのですね。

FOOMAでの接客で感じた点と導入のメリットは

高橋:
毎年FOOMAに参加してもらっていますが、今年展示したシステムは製造実行システムですか?
矢形:
今年に限らず、展示しているのは製造実行システムです。
お話ししました様に、会社の規模に対して費用負担が大きく感じられることから
今年からダウンサイジングをした商品を提供出来る様にしております。
合わせて、現場の方が使用しやすいように不要な機能を省くなど、改善に取り組んでおります。
高橋:
製造実行システムを導入したからといって、直ぐに導入費用を取り返す効果が現れるという訳ではないと思いますが、それでも導入するメリットはありますか?
矢形:
確かに費用対効果で見ると判りにくいと思います。
例えば人が指示通りの計量した場合、目視による確認の精度に対して、
計量器と製造実行システムがリンクしていることで間違いを防ぐ事が出来ます。
一日何回も、何種類も計量した場合の誤差は大きいと思います。
当然投入にも影響しますし量だけではなく、投入材料の間違いなどもハンディーターミナルによる投入前のチェックで防ぐ事も可能になります。
矢形:結果、安全安心な製造に繋がることになります
高橋:
その為には、計量器等には情報を読み取り送る端末が付いている機械の設置がソフトとは別に必要となるわけですね

AIを利用した画像解析とシステムの関係

高橋:
最近、AIによる画像解析で品質不良やラベル不良を見つける為に設置する傾向がありますが、このような検知装置と製造実行システムとは関連がありますか。
矢形:
異物探知などと同様、不適合製品の検知と排除に使用される機器は、製造実行システムとは異なります。
弊社のシステムに限らず製造実行システムは総菜などの製品が頻繁に変わる様な日配品より計画生産系の食品工場に向いていると思います

最後に

高橋:
FOOMAで来場された会社はどのような会社ですか?
矢形:
先ほどから話しております大手企業の方が多いです。
高橋:
中小規模で興味を持たれて説明を聞かれる会社はありますか?
矢形:
製造実行システムにおける計量工程を展示していることから、計量ミスを防ぐ相談は良くあります。
高橋:
ITと聞くと、壮大なシステムを想像しがちですが、エクセルで行う生産管理はそのままで、
客先の製造に寄り添った形での製造管理システムをうまく利用し、
生産上のミスの防止やトレーサビリティーに役立てる事だけでも導入を検討する価値はあると言うことですね。

頭から苦手意識を持たず、ペーレスのみのソフトでは無く、身の丈に合ったITの導入を検討する事をお勧め致します