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対談食品施設計画研究所 高橋 賢祐×食品開発コンサル高橋様

CVSデイリーメーカーの開発一筋、開発談話PART2

コンビニベンダー対談

2023,5,16

 

今回は開発談話PRAT2として引き続き髙橋氏の商品開発と品質に関して、講演
で使用した資料を基にお話しを聞かせていただきます。(PART1はこちら
講演の表題が脱コンビニですが、PART1でも最初に話されたとおもいます。

※PART1同様、私IFFの高橋と同じお名前のため、高橋コンサルとお呼びさせていただきます。

 

今の製品を否定する事から始める

高橋コンサル:
まずは全否定から。既存の製品が良いと限らない。試しに全ベンダーのご飯を関係者全員で試食してみました。
結果、私は下痢をしてしまったのです。原因は使用されている油や添加物と思えました。
これを機会に関係者には、意識改革を始める必要性を認識してもらいました。

IFF高橋:

資料に現在推奨している商品をすべて否定する事、特に売れ筋商品を否定する事で
すね。
資料に、市場にあってコンビニにない商品、食材の開発とありますが

高橋コンサル:

コンビニの場合、MDの意識を変える必要を言っている。
ベンチマークを探すばかりではダメ、残念ながら、コンビニ業界一位に採用されなかったNBメーカーが、二位、三位に売り込んできます。
それではダメで、何が欲しいのか、どういったものが創りたいのかを明確に伝えなければダメ、それに答えるNBメーカーを採用すべきで、しがらみは捨てるべきです。

IFF高橋:

資料にプロダクトアウトでは無くマーケットインであること、の意味は?

高橋コンサル:

物を工場で作ったから売れるんじゃ無い、マーケットを見ること、売れる物かが重要です。

IFF高橋:

作ったから売れるのでは無くマーケットが欲している物を作れと言う意味ですね。

高橋コンサル:
繰り返し言っているのは「創れば売れる時代から創っても売れない時代」になったのだから
客のニーズはなにかウォンツは何かを探らなければダメなんです。

IFF高橋:
原料に関して、CVS各社でホール野菜を使用している会社とカット野菜や冷凍野
菜を使用している会社がありますが、その違いをどうとらえますか。

高橋コンサル:
全てホール野菜を使用すべきとは思わないが、産地は季節でできが違うので、
信頼関係を結べる供給先を探す事が大事と思います。
カット野菜がダメだとは言わないが、例えば中華丼で言うと、プロが作ると生野菜でも冷凍野菜でも同じ大きさに揃えて調理します。
白菜場合、葉の部分と茎では加熱温度も時間も違うので、それを分けて納品出来ればカット野菜でも良いと思いますが、それが出来ていない。
炒める順番とかも考え、プロが作るものと同じにならなければいけない。
出来ないから売れないのです。

 

新たな製品を開発するだけが商品開発では無い

IFF高橋:
商品開発には二つの方向があると思う、既にある商品をより美味しく改良していく
方向と新たな商品を作り出す方向があると思うけれどどうですか。

高橋コンサル:
ベースの商品の品質をどう上げるか、人は出現頻度の高い物、なれているものを選ぶでしょう。
自分の家庭で考えても判るように一週間に一度はカレーが出たりするでしょ、それが美味しいと手に取りやすい。
ファミリーレストランでもコンビニのおにぎりでも上位5品目は定番、
売れている商品を更に良くする為にどうするかが開発の重要な仕事と思います。

 

定番化による自動化の可能性と品質管理

IFF高橋:
製造機械についても定番化と関係がありませんか

高橋コンサル:
徐々にでも売れてきた段階で品質を守った自動化を含めた機械への投資が可能になります。
ジューシー感が大切、その為に過加熱や過冷却で安全を担保するのでは無く、
品質を確保するための温度管理が出来るような工場づくりをする必要があります。

IFF高橋:
私が研修を受けた食品安全安心プログラムのSQF2000にはCCPとCQPが
設定されていて、まさに重要品質管理点として加熱の上限を決めている。製品はC
CPとCQPの間で加熱されなければならないと定めている、まさに過加熱による
品質の低下を防ぐ事を意味している。

高橋コンサル:
余熱加熱という方法があるが、それは調理人が様子を見ていなければなりません。
工場生産でそれが出来るかと考えていたが実際にトンカツでやってみました。
中心温度75℃、余熱管理で80℃まで上げる。
テストで1便だけやってみた結果、売れたんです。
でも残念なことに長続きはしませんでした。
まさに新しい製品を作らなくても、おいしさを追求した品質の改善で利益がでることを証明しています。

対談の中で試食していた製品、玄米は商品名通り食べやすく、濃い木綿豆腐は酒の肴に最適、且つどれも底カロリー

 

連続炊飯でも、ご飯を美味しく炊く

IFF高橋:
今までのお話しはコンビニの米飯総菜の品質管理に長く係わっていた観点から、開
発には品質管理が必要とわかりました。
それでは主菜と言われているご飯に関して、品質上重要な事は?

高橋コンサル:
パスタは中心が残っていても良いが、ご飯は逆なんです。
老化対策やホット成型を行う為にも外側が残っていなくてはならない。
逆アルデンテでなければ成型も冷却もうまくいかない、おいしさが違うと思います。
炊飯ラインでは洗米後に付着した水を除去した後の重さに対して、
加水するのと付着水を除去せず加水するのでは炊き上がりが違います。
このことから既存炊飯ラインにたいしても洗米後に付着水を除去する装置を組み混ませました。

 

これからの消費者への取り組み

IFF高橋:
少し高級なスーパーで最近見かけたミールキットはどう思いますか。

高橋コンサル:
良いと思うけど高いよね。
フランスの冷食メーカーのピカールも出店しているが、美味しいけれどやはり高いと思う。
日ハムが出している肉だけ入れてください、青物だけ加えてもらえればチンジャオロースが出来るような、
一手間掛ける製品が売れるのではないかと思う。完成版の一つ手前という感じかな。
余談になるけれどそれの方が主婦にとって抵抗なく、料理した感が持てるのかもしれない。

IFF高橋:
某コンビニがだした千切りキャベツをどう思いますか。

高橋コンサル:
千切りは簡単そうでそれなりに技術が必要です。
又、キャベツ1/2サイズを買ったらかなりロスが出ます。
使い切で低カロリー・低コレステロールですので、様々なスーパーで定番になっているのでは。
これからも低カロリー・低コレステロールは開発の重要なポイントと思います。
現状は中途半端な感じがしますね。

健闘している業務用スーパー 

IFF高橋:

コロナ禍以降、誰もが冷凍食品に力を入れているけれど、どう思いますか。
高橋コンサル:
家庭の冷凍庫がアメリカなみに大きくならなければ限界はあると思いう。
一方、冷食中心に業務用スーパーがあれだけ売れているのには興味があります。
驚いたのは天然酵母食パン、これは美味しいです。
このパンのように原料を最大限生かす製造工程にしなくてはダメなのです。
その為にタイムテーブルを見直す事が必要になります。

IFF高橋:
業務用スーパーの食品は量が多いと思うけど。

高橋コンサル:
最近は個食も多くなってきていますよ。

 

髙橋コンサルが絶賛していた業務様スーパーで売られている食パン。私が食パン専門店で買っている食パンは重さ990㌘で1,000円 天然酵母食パンは644㌘で278円、トーストにした時に直火で焼いたような香ばしさが特徴

 

 

開発の心得

高橋コンサル:
自社の製造能力を知ること、だからまずは開発担当者も現場に入り、各生産機械の
特徴、能力を知ることが大切、かといってそれに囚われてはいけない。
開発担当者に話すのは、「原料が安いときは手間を掛けろ、反対に高いときは出来る
だ限り手間を省け」トータルコストを考えなさい。そうしなければ利益が出ない。
開発は夢のある仕事「開発は売り上げを作り、利益を生む、そして会社の未来を作
る」そういう仕事だと常に心得なければ行けないと思う。

 

最後に

IFF高橋:
今回は開発と品質が一体となって商品開発に取り組む話を髙橋コンサルにしてもらいました。
髙橋コンサルの経歴からCVSの米飯、総菜の商品開発を中心にお話しを聴きました関係から、
他の食品メーカーにとって何処までお役に立てる内容かは分かりません。
少しでも参考になれば幸いと思います。

 

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